

真心(マシン)創造ラボにあるお宝の紹介も残すところわずかとなりました。今回はラボの一番奥にある、とても背の高いハイブリッドACサーボプレスという機械です。

ハイブリッドACサーボプレス
コマツ産機(株)H1F150-OSこれはプレス機械といって一般に金属に強い力を加えて変形加工する機械なのです。プレス機械の歴史は古く、もとは15世紀に発明されたグーテンベルグの印刷機なのです。それが印刷機と金属機械に分かれ、このような加工機に発展してきたのです。プレス機械の一番の特徴は加工時間が非常に短く1つ作るのに1秒前後しかかからず、大量生産に向いているということなのです。
質問に答えて頂いたコマツ産機株式会社の黒潟さん(左)と田中さん。

大きく分けて2通りあります。1つは板状のものを加工する板金という加工で、もう1つは固まりを金型で形成する鍛造というものです。この機械はそのどちらもできます。

はい、金属でできた腕時計の側面部分は鍛造加工で作られていますし、裏の丸い板の部分は板金加工なのですよ。マシニングセンターやレーザー加工機のような機械では工具は汎用に使えますが、プレス機械では力をかけて変形するという加工の特性上それぞれの成形にあわせて金型という専用の工具がいるのです。でも工具さえ作れば短時間に大量のものが加工できます。

この機械で150tぐらいの力はかけられ、300mm四方ぐらいのものまで加工できます。車のボディ用になると1000〜2000tぐらいの力がいるので、この機械はプレス機械としては中程度の大きさのものですね。

さまざまな電子部品がプレス機械でつくられています。
主に自動車や電気製品の部品に使われています。先ほども言いましたように、プレス機の一番の特徴は製品が速くできることなので、大量生産するような金属部品には向いているのです。自動車の部品では6〜7割ぐらい使われています。


高速で連続的に加工する順送加工。
動物や植物の雑種のように違う種類のものが混じり合ってできたものをいいます。プレス機でハイブリッドと名付けられた場合、何と何を組み合わせるかというのは会社によって違います。この機械ではACサーボモーターとリンク駆動が組み合わされています。


鍛造加工でつくられた歯車。
ACサーボモーターはコンピューターによる数値制御で作動するモーターです。従来のものは機械式のプレス機で、この方式では機械の中でモーターを回し、モーターの回転を機械の上下運動に変えて加工していました。100年ほどこの方式だったのですが、ここ数年の間にサーボモーターを使ったサーボプレス機が使われるようになってきました。

大きく2つあり、1つは精度がよくなるということと、もう1つは複雑なものができるようになるということです。従来のものは上がって降りるというだけの単純な繰り返ししかできませんでしたが、ACサーボプレスではコンピューターを使っているのでスピードを変えたり、途中で止めたりできるために精密なものができ、成形性がよくなるのです。この技術は日本発のもので使われ始めてからまだ10年にもならない新しい技術なのです。

はい、でもサーボモーターだけではあまり大きな力が出せず、モーターを2個使っていたこともありましたが、この機械ではリンク駆動という、上下運動をさらに増幅させる仕組みを組み合わせることで1個のモーターで150〜200tの力が出せるようになりました。

ク駆動の異なるものが混じり合ったようなものなんですね。ハイブリッドというのは。
はい、ハイブリッド自体新しいものですが、この機械はさらにほかのプレス機にはあまりみかけられない、リニアセンサーという高さを測るセンサーがあり、それで常に測りながら加工するのです。温度によって機械に多少の狂いが出るため、それを補正しながら加工することができる重要な装置です。精度は1/100mm以下で今までの5〜10倍の精度です。

プラスチックや板といったものも加工できます。また、ビニールを2枚重ねたもので上の部分だけを打ち抜くといったこともできます。このようなことは精度がよくないとできないのです。また、金属でも加工が難しいとされてきたマグネシウムなどもこのような機械なら途中で動きを止めて材料を加熱することができるので加工できるようになりました。

動作が上下運動だけなので位置とスピードのみを指定するだけでプログラムを組むほどではなく、それほど難しくはないのです。学生さんでも使いやすい機械だと思います。

