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テクノアドバイザー奮闘記

「第1回:Prologue・・・」

新川 真人

先端科学技術育成センターマシン創造ラボに数々の最新鋭工作機械が導入されてから早いもので2年が経とうとしています。ここでは、それまでNC工作機械にも、3次元CAD/CAMにも触れたことのなかった“素人”である著者が、ビクビクしながらもどうにか加工が出来るようになるまでの奮闘記を紹介します。

1.はじめに


導入されているNC工作機械(立形5軸マシニングセンタ)です。
操作ミスで壊してしまったらと思うと、恐ろしくて触れません…
 最初に断っておきます。着任当初、著者の加工スキルは「学生の皆さんより多少は上」というレベルでした。せいぜい学生時代を過ごした高専での実習や研究活動の中での装置製作を通して、“同年代の中では機械工作の経験がある”と根拠のない自信がある程度でした。そんな著者も着任後は同僚のテクノアドバイザーや機械メーカのエンジニアの方々(いずれの方々も著者に言わせれば“神”です)から様々な技術を学んで、何とか皆さんにも基本的なことなら教えられる程度になりました。
 そんな著者が、他大学にはほとんど見られない最新鋭NC工作機械を自由自在に使いこなし、様々な複雑な製品を加工できるのか?当時も(そして現在も)不安でイッパイでした。そんな著者が最初にしたこと、それは“NC工作機械って具体的には何?”という疑問に対する調査でした。

2.NC工作機械とは


単純な形状のNCデータ(一部)です。これで何が出来るんでしょう?
 NCとは、「Numerical Control」のことです(これぐらいは知っていました)。直訳すると、「数値制御」ということです。では、ここでいう「数値」とは何を指しているのでしょうか? 真っ先に思いつくのは、小学校の算数で習った数字です。他には、代数式や座標値といったものでしょうか。では、これらが「数値」を表しているのか…実はその通りです。ただし、付け加えるのであればさらに動作を表す様々な指令もこれに該当します。
 例えば、「G00 ○○ △△…」という指令があります。これは、「○○、△△といった指令された各座標(数値)に向かって早送り速度で移動しなさい」ということになります。これだけ書くだけですと“なんだ、簡単じゃん”と感じますが、実はさらに細かな決まりがあります。 座標値には「アブソリュート指令」と「インクレメンタル指令」があります。そして、移動経路「非直線補間系位置決め」と「直線補間系位置決め」があり、どちらかをパラメータで選択することになります。 さらに、早送り速度は工作機械の各軸独立に機械メーカによって設定されており、事前に把握しておく必要があります。  指令としては最も基本的な「G00」でさえもこれだけの決まりがある上に、これが数百もあります。さらに、制御装置によっては使える、使えない指令もあり、工作機械メーカで設定されている指令もあります。これらはユーザーズマニュアル全3巻(総ページ数は1,800ページ超!)に詳細に掲載されております。


これがマニュアルです(タウンページが3冊ある感じです)。
“バイブル”ですね。
 これらの内容を理解しなければいけないかと思うと、かなりゾッとしました。でも、やらなければ仕事ができない=お給料がもらえない(!!)ということになります。どんな時代であってもお金を稼ぐということは大変なことなんです…
  ところで、先ほどからNCの説明をしてきましたが、NC工作機械とは要約すると、「数値によって動きを制御した工作機械」ということになります。そしてその動きは数値によって構成されるプログラム(NCデータ)によって制御されます。ちなみに、一般的にはコンピュータと組み合わされたCNC(Computerized Numerical Control)という形で使用されます。よって、正確に表現するのであれば「CNC工作機械」とするべきかもしれません。ただし、現在では両者をほとんど区別することなく使用しています。よって、本稿では以後も「NC工作機械」として表現していきます。

3.NC工作機械による加工の流れ


加工までのフローがこのようになります。まだ説明していない色々なキーワードが出てきました。詳細は次回以降で!
 前述したように、NC工作機械を動かし、実際に加工するためにはNCデータと呼ばれるプログラムが必要となります。では、加工するまでにはどんな作業が必要になってくるのでしょうか。先端科学技術育成センターで実際に加工(特に複雑な3次元加工)が行われるまでの流れとしては以下のようになります。下の図と照らし合わせながら読んでください。
  @加工したい製品形状を考える
  A手書きの簡単な図面を書く
  BCADにより形状データを作成する
  CCAMによりCLデータを作成する
  Dポスト処理を行い,NCデータを作成する
  ENCシミュレーションを行う
  FNC工作機械により加工を行う
 大雑把ですが、だいたいはこのような流れになります。ここで新たなキーワードが色々と出てきました。これらは次回以降に改めて説明しますが、ここでは、“実際に加工を行うまでに様々なデータを作成しないとダメ”ということが分かってもらえればいいです。そして、「加工品の良/不良を決定するのは実際に加工を行うまでにほとんど決まってしまう」ということです。
  ここまでザッと書いてきましたが、皆さんはどのようなことを感じていただけましたでしょうか。著者は当時(現在も、ですが)クリアしなければならない様々な技術的、技能的な課題を目の前にして正直アップアップでした。“とんでもない分野に足をツッこんでしまった…”とも思いました。しかしながら、同時に“今まで知らなかったことを学べる!”という期待感も感じていました(と言っても、圧倒的に不安の方が大きかったのですが…)。

良好な加工を行うためには様々なソフトウェアも活用しなければいけません。

さてさて、著者は無事にNC工作機械を使えるように
なるのでしょうか?(上図はレーザ加工の様子です)

 実際にNC工作機械に触れるまでに、これから取り組んでいく頂の高さに戦々恐々としている著者。果たして、こんな素人が加工を行えるまでになるのか?
 次回は、「3D-CAD/CAMに初めて触る」を予定しています。3次元加工を行う前に欠かせないプロセスを取り上げます。