10月18日(土)、「第5回福井大学元気プロジェクトまつり」を開催しました。このイベントは「学生自身が汗を流して取り組んだプロジェクトの総合発表会」と銘打って、学際実験・実習を開始した平成16年から毎年開催しています。当初は来場者の少なさに泣き、思わず客引きに出たりしたものですが、現在では市民が科学技術に親しむ場としてもすっかり定着し、今年もイベントによっては行列のできる盛況ぶりでした。勝つまで止めないことが必勝の秘訣ですね。もちろん、この成功も関係者のみなさまのご協力の賜物であることは申し上げるまでもありません。みなさん、どうもありがとう、そして、これからもヨロシク!
さて、今回は、発表やイベントに忙しく働く学生さんたちを中心に取材してみました。
まずは、ノーベル賞特集から
祭り開催の10日前に物理学賞、そしてその翌日には化学賞を日本人が受賞するというニュースが飛び込んで来ました。さっそく、物理工学科と生物応用化学科の先生に「ノーベル賞特集」が企画できないか打診したところ、どちらも学生さんたちが発表できるとのこと。当日は、話題性もあって結構混雑するのではと思って、開始前から取材開始。
怪しく光る蛍光タンパク質 「GFPって何だろう?」では、GFP遺伝子を組み込んだ大腸菌が怪しく光る様子を観察。細胞に組み込んでも、その生物に悪影響を与えずに観察できるスグレものだそうで、細胞内で特定のタンパク質の働きを知るのに活用されているとのこと。でも、私にとってもっと驚きだったのは、生物応用化学科の学生であれば誰でもこのような大腸菌が作れるとのこと。その学科の学生にとっては当たり前のコトでも他分野の人間からは「魔法」のように見えることってあるんですよね。そういった経験と発見こそが、学科横断型の創成活動の魅力なのではないでしょうか。
対称性の破れって言うのは、…とりあえずピース! 物理学賞の方は、物理工学専攻修士課程1年の光岡広貴君がポスターを使って説明。ノーベル賞受賞者の論文コピーも無料配布していて、後で行ってみると用意した分はすぐになくなっていました。また、受賞者の一人である小林誠先生と名古屋大学で同級生だったN先生が学生時代の写真を持参して来られ、これも拝見。当然とは言え、若々しい頭髪が印象的でした。
多彩な学生たちの活動
ラインのとぎれた部分も大丈夫! 次に訪れたのは、ライントレースカー。ジャパン・マイコン・カーラリーという大会に出場しているそうです。白線をたどって見事に走り、白線が途絶えたところもコース上の印を検知して、次の白線を探し出して走っていきます。説明してくれた町友貴君(知能システム3年)によると「回路や制御プログラムなどを自分たちで考えながら学ぶことができる」プロジェクトであるとのこと。
ライントレースカーの横で展示していたのが「フェアトレードってなんだ?」。途上国に不利にならない取引によって途上国の人たちの生活をサポートしようというフェアトレードですが、日本での知名度はイマイチ。でも、活動を通じて大学生協でもフェアトレード商品を置いてもらえるようになり、福井でもじわじわと認知度が上昇してきたとのこと。「自分がやったことにいろんな反応があるのが面白いですね」と藤原直生さん(物理工学3年)。
パソコンの中身って、こうなってるんだ〜
女子高生も一緒にのびのびスライム!
今回も大盛況だったのがパソコン・リサイクル。このグループは学内で不要になったパソコンのリサイクル活動に取り組んでいます。イベントではパソコンの分解や組み立ての体験ができます。この活動に参加するようになって「パソコンの中身が分かるようになり、自分でも修理ができるようになりました。」と山内大輔君(材料開発2年)。「パソコンに限らずモノを大事にするというか、モッタイナイという気持ちが強くなりましたね。」とも語ってくれました。
楽しそうにタンパク質の分子構造をパソコンで表示して説明していた大学院生の横では、子供たちが賑やかにスライム作り。学生たちが考案した「福井大学秘伝」のどこまでも伸びる「のびのびスライム」では、作り方を丁寧に指導していました。でも、それって「秘伝」じゃなかったの?
知能ロボット・アドバンストコースで格闘技ロボットを操作していた魚住洋佑君(知能システム2年)は、私の無理な注文に応えて正座ポーズや空手ポーズなど複雑な動きを見せてくれました。その横では、迷路を駆け抜けるマイクロマウスの実演。詰めかけた子供たちも驚きの声。担当していた古川博史君(生物応用化学3年)は、「問題に突き当たったときに試行錯誤で解決していくのが楽しいですね。」と話してくれました。
昨年に引き続き轟音を響かせて走り抜けるフォーミュラカー…と思って取材に訪れると、どうも様子が変。車両にトラブルが発生して修理中とのこと。佐々木崇君(機械工学1年)もパソコンを操作して作業していましたが、そのパソコンも途中でダウンしたりとトラブル続き。「毎日が勉強です」といいつつ、臨機応変に対応していたのが印象的でした。会場を離れて30分ほどしてから「轟音」を聞いて一安心。
「メカトロ工房」で動く機械を製作するグループの岩間正太君(機械4年)を始めとする学生たちは、「こうした活動は時間が取られて大変だけれど、研究の息抜きになる。」とも話してくれました。
ドミノは続くよどこまでも金融の破綻ドミノは困りますが…
「地元の人たちと一緒に実施した『あるもの探し』が面白かったですね。」と話してくれた田中順己君(建築建設3年)が担当していたのは、岡保地区での「どろんこ祭り」の企画・運営を始め、子供たちの遊び場づくりに取り組む「遊房」のドミノ倒しのイベント。親子連れを中心に大人気でした。
悠然とパソコンの前に座って石原周太郎君(建築建設、修士1年)が紹介していたのは、建築建設工学の学生有志による建築展。「黒」をバックにした展示で見せ方も見事。空き地の利用を提案したビジネスプラン・コンテストで最優秀賞を取った作品もありました。
福井大学のユニークな教育プログラム
分光器を通してみると、2つのランプの違いが一目瞭然! 先日、『街なか』にぎわいプランコンテストで優秀賞を獲得した「灯りプロジェクト」グループは、参加者自身で分光器を製作して蛍光灯と電球のスペクトルの違いを観察して人間にとっての効率よい灯りを実感するイベントを実施するとともに、製作した灯りやライトアッププランなどを展示していました。このグループの活動は、大学院教育で課題に取組ながら実践的に学ぶプロジェクト・ベースト・ラーニング(PBL)と学部の学際実験・実習、さらには創成活動が融合して生まれた福井大学ならではの活動と言えるでしょう。「研究との両立が大変ですが、やりがいがあります。これ、私がデザインしたランプなんですよ。」と楽しそうに答えてくれたのは山田佐知さん(建築建設4年)。メンバー全員のキビキビした動きが印象的でした。
次に、工学部共通科目「学際実験・実習」のデジタルクリエータ・プロジェクトでビデオ制作に取り組んだ学生たちがビデオ編集を指導するという企画を取材。まったく未経験の学生たちが、わずか数ヶ月で映像作品が作れるようになり、さらに来場者に技術指導ができるようになるなんて驚きです。「自分たちで工夫しながらカタチにしていくのが面白いです」と庄瀬貴大君(知能システム2年)。来場者の演技指導まで含め、イキイキとした学生さんたちが印象的でした。「アクションものの希望で苦労しました。」なんて言いつつ、なかなか見事な孫悟空に仕上がっていました。人に教えるのが一番イイ勉強かもしれませんね。
同じく「学際実験・実習」の知能ロボット・プロジェクトでは学内大会で優勝した歩行ロボットを始め、数台のロボットが自分でコースを探しながら歩いていました。エコロジー&アメニティ・プロジェクトの発表では、活動内容を主にポスターで発表。取り壊しになる工学部2号館の跡地利用を考えるプロジェクトを行った宮田達朗君(建築建設2年)と酒井智貴君(生物応用化学2年)は、感じたことを言葉で表す前に雑誌などの写真を切り貼りしてコラージュ作品をつくり、その作品を元にして語り合いながら具体案を抽出するという興味深い活動の成果を発表していました。そんな発想法もあるんですね!
教職員も大活躍
今晩から快適な枕で… NHKの「ためしてガッテン!」でも紹介された安眠枕を設計するための寝返り研究用レーザーポインターを開発している塩島先生のグループの発表は、中高年を中心に大人気。会場がやや分かりにくい場所にあったため(どーして、大学って迷路みたいなんでしょうね。我々は毎日「マイクロマウス」ですね。)会場までたどり着けなかった方もあったようです。塩島先生の軽妙で分かりやすい説明についナットク。私の場合、7センチが最適枕高さであることを発見。これで、腰痛も良くなるとイイのですが…。
宇宙から飛来する放射線を可視化するスパークチェンバーの前で「生まれてから毎日毎日ずっ〜とこれだけの宇宙線を浴びているんですよ。」という玉川先生の説明には、一同、「へ〜!」と驚きの声。
二人がかりでコカリナ製作 真心(マシン)創造ラボでは、技術職員の方々が工作機械を使ったコカリナの製作を指導。みなさん、コカリナって知っていますか?コカリナは、ハンガリーの民族楽器をもとに日本で改良され、1995年に「コカリナ」と命名されたカワイイ笛です。本来は、木の暖かみのある音色が特徴ですが、今回は金属加工でひと味違ったメタル・コカリナを製作。30分程度の機械との「格闘」のあと、音を出して見たときの参加者の笑顔が印象的でした。
取材しながら会場を1周するのに2時間半。足はすっかり棒状態。3時間のイベントを終え、学生たちと一緒に後片付けをした翌日、我が老体が筋肉痛に襲われたことは言うまでもありません。