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「知能ロボット・プロジェクト」の巻

創成教育部門 片山 正純(知能システム工学専攻)  

 知能システム工学科では設立時からロボット工房を設置し、学生実験において知能ロボットの設計から開発までを一貫して学べるようにしており、創成教育に積極的に取り組んでいます。この経験を活かして、工学部の全学科の学生を対象とした学際実験・実習の「知能ロボット・プロジェクト」を開始し、知能ロボット懇話会により実施・運営しています。

実験内容

 「知能ロボットプロジェクト」では、歩行ロボットコンテストを目標として、LEGO MindStormsを用いた自律型歩行ロボットの設計から開発までを一貫して取り組ませることにより、「物づくり」に関する動機づけ教育および創造力育成教育を行ってます。
 このプロジェクトは、学際実験室(総合研究棟I 10F)において水曜日の5限と6限に実施しています。定員は36名(4名/班、9班編成)で、学生の人気が高いため、受講生は抽選により決定しています。班分けは異なる学科の学生が同一班になるように事前に決定しており、それぞれのグループでは、プロジェクトリーダー、議事録・日誌係、部品管理係、パソコン係を決定し、役割分担を明確にしてして開発作業を進めます。

 
18年度学際実験・実習(左:受講生、右:制作環境)

 実験前半には、懇話会の教員により、レゴマインドストームを形成している素材について(入江聡)、センサーについて(久田研次)、モータとは(川崎章司)、ヒトの歩行(片山正純)、ロボットの歩行(池田弘)、ロボットの動作機構(川谷亮治)、NQCを用いたプログラミング(東海彰吾)について講義しています。その後、班毎に歩行ロボットの設計構想を検討し、発表会を実施し、歩行ロボットの開発を行っています。
  学際実験室は時間外にも開放しており、時間外にも自主的に制作に取り組んでいます。

歩行ロボットコンテスト

 ぞれぞれのグループ(全9グループ)で作成した歩行ロボットを対象として、歩行ロボットコンテストを実施しています。タイムトライアル部門、デザイン部門(デザイン賞)、アイデア部門(アイデア賞)によりコンテストを行い、総合優勝を決定して表彰しています。

 
歩行ロボットコンテスト(左:作品例、右:コンテストのコース)

アンケート調査

 学際実験・実習では独自にアンケート調査を実施しており、知能ロボット懇話会ではアンケート調査結果に基づいて実施方法を検討し、毎年改善を継続しています。
  満足度に関する調査結果(図3)から、16年度には20%の学生が「不満足」と回答していましたが、開発時間の見直しや実験室の開放などの改善により、18年度には「不満足」が0%に減少し、「満足」が60%に増加しました。学生からの感想では、大学に入って一番面白い授業だった等の意見が多く書かれています。また、「普通」や「不満足」の回答では、制作する時間が足りない、制作したロボットに満足していない等の理由がほとんどで、少しでも良いロボットを制作したいとの意欲が表れており、学際実験・実習に対する否定的な意見は全くありませんでした。
  さらに、班分けに関して、異なる学科の学生と知り合いになれた等の肯定的な意見が多くあり、30%程度の学生が「よい」と回答しており、「悪い」と回答したのは平均7%程度でした。このため、異なる学科の学生を組み合わせた班分け方法は概ね良好であると考えています。班の人数に関して、16年度には6名/班であったため44%の学生が多いと回答していましたが、17年度に4名/班に変更した結果、人数が多いという回答は20%程度に減少し、人数に関しても満足度が上昇しました。

知能ロボット・アドバンストコースの実施

 学際実験・実習「知能ロボット・プロジェクト」を発展させて、より高度な創成教育を目的として、知能システム工学科では「知能ロボット」アドバンストコースを実施しています。アドバンストコースでは、工学部全学科の学生を対象とし、小型ヒューマノイドを自作し、福井大独自のヒューマノイドの開発を目指しています。このコースでは、学生自身が構想を練り、企画・設計・デザインから開発までをそれぞれの学生の得意分野を生かして自主的に活動しています。このコースは単位取得を伴わない自由な創成活動です。
 2006年3月には二足歩行ロボットによる格闘競技大会である第9回ROBO-ONE(東京)に初出場し、147チーム中58位の成績でした。現在も上位入賞を目指して開発を続けています。

  
第9回ROBO-ONE(東京)に初出場

元気プロジェクトまつり

 学生達が学際実験・実習、知能ロボット・アドバンストコースで製作したロボットの展示とデモンストレーションを行いました。
 また、来場者がLEGO Mindstormsを用いて、ロボット製作を体験学習できるコーナーも設置したを実施しました。この体験学習には、福井大学の学生や親子連れなど約40名が参加しました。自分の子供が真剣に作成している様子を見て、「うちの子がゲーム以外でこんなに真剣になっているのを初めて見ました」などといった意見も聞かれました。

  
元気プロジェクトまつり(左:体験学習、右:ロボットの展示)

学生からの声(アンケートから)

永井君(機械工学科)
感想:得られたことはたくさんありました。でも、製作に時間がかかるので学科の勉強に少し支障があったかもしれません。 グループ編成:話し合うのに良い人数でした。仲の良い友達とではなく、全く知らない人とやることでコミュニケーション能力がつくと思います。

中西君(材料開発工学科)
感想:普段さわれない“高価な”道具を使い、ロボットの基礎を学べました。プログラムも独特であり、意欲を持って取り組めました。 グループ編成:話し合いやすく、役割分担が楽でした。同じ学科の人がかぶらないのは適切だと思います。
その他:プログラムの問題で動作しない理由がわからず苦労しました。プログラム資料に良い例ばかりでなく、「失敗例」なんかがあるとわかりやすいのではないでしょうか。

林君(物理工学科)
感想:協力して一つの物を作れて楽しかったです。
グループ編成:いろいろな意見が聞けました。みんなで協力してやっている雰囲気が良かったです。
その他:いい人達とグループが組めて良かったと思います。自分の班は開放時間をほとんど使わず限られた時間内に集中してやりました。自分は四足歩行を途中であきらめかけたのですが、班員があきらめない姿勢で完成させてしまって、驚きました。みんなが力を合わせてやるからあきらめずに完成できたのだと思います。