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実践サイエンス寺子屋 生物コース パート2

        

寺田 聡(生物応用化学科)

はじめに

 福井大学工学部の誇る創成教育には、授業である学際実験・実習以外にも、単位はつかないものの、「実践サイエンス寺子屋」というものがあります。実践サイエンス寺子屋は、これがそのまま創成教育というわけではなく、実際に創造的な取組を行うに前に、皆さんが身につけておいた方が良い、基礎的な内容です。そして、工学部のどの学科に属していても学ぶことができる、そんな内容となっています。現在のところ、物理、化学、電気・電子、生物と4つのコースが準備されており、1年生から3年生・4年生まで、幅広く受け入れております。
 このうち、私(寺田)は、末先生と一緒に生物コースを担当しております。末先生はパート1として応用微生物学の領域を担当し、寺田はパート2として動物細胞工学の領域を担当しております。今回は、寺田が担当しました動物細胞工学範囲の内容を紹介します。

動物細胞工学とは


熱心にメモをとる学生たち。
やる気になってやることは苦になりませんよね。
 ヒトないしほ乳類の細胞を体外で培養する技術が注目を集めています。たとえば、細胞療法としては、火傷で損なわれた皮膚を健全な部位から得た皮膚細胞を体外で増幅する治療法があり、さらには、失われた心筋のかわりに、筋肉細胞を体外培養して移植するという心臓病の治療法があります。また、生理活性タンパク質を、細胞培養することで生産されており、これらはバイオ医薬品として、大変有効な医薬品となっております。
 このように、細胞培養が有効になってきますと、簡便で効率的に細胞培養を行うことが求められることになります。特に、生理活性タンパク質の生産を行う場合には、生産細胞(工業用細胞)のパフォーマンスを少しでも高めることが産業的に有効です。このような目的で、優れた特質を有する工業用細胞を樹立しようという試みが数多く実施されています。そのような試みとして、今回のコースでは、工業用の有用物質生産細胞にアポトーシス耐性(細胞が死ににくくなること)を付与することを紹介しました。

実習の内容

 平成20年度のコースは、2月20日、23日、24日の3日間で実施しました。参加してくれたのは、1年生2年生が1人ずつ、3年生が4名の計6名でした。工学部の全学科に募集のチラシを掲示したのですが、参加してくれたのは生物応用化学科の学生さんだけで,この点はちょっと寂しかったです。
 初日は、「細胞死(アポトーシス)」について、およそ2時間、しっかりと講義しました。教員としては、大学1年生にでも理解できるように、できるかぎりやさしく噛み砕いて説明したつもりです。
 二日目は、実際に細胞をお湯につけて細胞死を誘導しました。47℃のお湯につけた場合と、55℃のお湯につけた場合(10分間の加熱)で比較してもらいました。トリパンブルー染色法という方法を用いて、死んだ細胞だけを染色し、生存率を求めてもらったところ、47℃ではほとんど死にませんが、55℃ではおよそ半分の細胞が死滅している、といったことがわかりました。
 三日目は、前日に細胞死を誘導した細胞から、DNAを抽出し、アポトーシスをおこしたかを判定しました。アポトーシスで死んだ細胞は、DNAが断片化します、その断片化を観察しようとしました。細胞を溶解し、続いて混入しているRNAを分解処理しました。その後で電気泳動し、断片化を観察しました。が、しかしながら、今回はうまく断片化DNAを観察することができませんでした。皆さん、がんばって実験に取り組んでくれましたのに…。残念でした。


何事も、一生懸命にやれば必ずあなたの能力を高めます。
 あまり生物的な実験が無いこと、また、生物応用化学科でも、3日間続くような長い実験を経験していないために、楽しく取り組んでもらえたようです。TAとして、3名の学生さんに協力いただきましたが、受講生6名に対して3名で行いますと、初めての操作も十分に指導が行き届きます。受講生の皆さんにも満足いただけたようです。

 来年度も、改めて実施しますので、この記事を読んでいる皆さん、ぜひご参加ください。どんな分野に進もうとも、様々な分野のアプローチを知ることはあなたの創造力を豊かにします!