企業化育成部門 山本 ロ勇
製品開発とビジネスプランの実践を通した人材育成
優れた「ものつくり」技術を武器に世界で活躍してきた日本が、現在、その地位を失いつつあります。それは、安い労働賃金を背景に中国などの発展途上国に生産の拠点・主体がどんどん移っていっているためです。優れたものづくり技術さえも、生産拠点がなくなり受け継ぐ後継者がいないために、日本から消え去ろうとしています。このように、日本の産業社会は大きな変革期を迎えています。このような状況を打破するためには、大量産・低コスト化を追求する従来型の生産活動から、斬新で付加価値が高く、少量生産でも利益率の高い開発型生産へと移行することです。そこには、専門知識だけでなく、経済・経営的視点とともに企画・展開力を持った技術系人材が必要です。
そのような人材育成を狙いとして、本学の大学院工学研究科、地域共同研究センター、ベンチャー・ビジネス・ラボラトリーが中心となって企画立案した「創業型実践大学院工学教育による人材育成」事業が、平成18年度〜平成20年度にわたって文部科学省から認められました。このプログラムは大学院生、若手企業人を対象としたもので、概要は下図に示すとおりです。最大の特徴は、ビジネスプラン作成とインキュベーション・ラボファクトリーでの商品試作・試し売りを通じた実践的教育です。試作品に対する市場の生の評価を得ることで、市場動向・ニーズが把握できるとともに商品開発のセンスを磨くことができます。もちろん、経営戦略、技術経営、知的財産管理などの経営マネージメント教育カリキュラムも用意されています。さらに、特徴的なことは、地域企業OBによる匠人材の活用です。経験豊かな技術者によるノウハウ指導を受けることで、迅速・効率的な商品化が図れるだけでなく、わが国の優れたものづくり技術の伝承にも貢献できます。その他、地域企業でのインターンシップの実施、福井県立大学(MBA)での経営知識習得なども計画されています。
このプログラムの実施を通じて、創業マインド、企画・展開力を持った人材育成はもちろん、福井大学発ベンチャーの創出がより活発化することが期待されています。
このプログラムの修了者には「修了証」が発行されます。できるだけ多くの学生諸君が参加してくれるよう、皆様方のご協力・ご支援をよろしくお願い致します。なお、本プログラムは、起業化育成部門を中心とした創成CIRCLEとの密接な連携のもとに実施にされます。